子供じみたことをした。
我ながらそう思う。
母の意図は分かる。義妹のしていることなど、くだらないコトこの上ない。
そんな二人に腹を立てるようなバカな真似など、するもんじゃない。
だが聡は、納得できなかった。
ただ納得できなかったのだ。
ようやく落ち着いてきた心内にため息をつき、ふと空を見上げた。
星など見えない。
生暖かいが、項には心地よい風。
それにしても、俺はよっぽど嫌われているらしい。
本気でくっつけようとしているなら、もっとやりようもあるだろう。義理とはいえ妹として、もっと聡を美鶴に売り込むコトぐらい、できるはずだ。
だが緩のしてきた事と言ったら、美鶴の周囲を勘ぐり、適当に聡へ連絡するくらいだ。
一度、美鶴と緩が会話を交わしたことがあるらしいが、美鶴の話だと、あまり好意的でもなかったと聞く。
別に売り込んで欲しいとは思わないが、緩の態度はどうも中途半端だ。本気で美鶴と聡をくっつけたがっているようには、思えない。
だから今までその意図に、まったく気付かなかった。
廿楽の役には立ちたいが、俺の役には立ちたくない…… と、言うワケか。
笑ってしまう。
廿楽のためとは言っても、私情は捨てられないらしい。嫌悪する聡が美鶴とめでたく結ばれる手助けなど、百歩譲っても無理というところか。
ならばせめて、美鶴と瑠駆真がこれ以上接近せぬよう監視し、必要とあらば聡を送り込む。
俺って、そこまで嫌われてる? なぜ?
だが、どんなに考えをめぐらせても、聡には思い当たらない。
まぁそもそも、親の再婚自体に反対していたのだ。再婚相手の連れ子を嫌悪するのも、わからないでもない。
そう言い聞かせて、またため息をつく。
どんな面して帰るかな?
しばらくブラブラ時間を潰したとしても、結局はわが家へ戻らねばならない。
勢いに任せて飛び出したので、財布も何も持っていない。ファミレスやゲーセンは使えない。
どうすっかなぁ〜
ぼんやりと立ち止まり、無造作にジャージのポケットに手を突っ込んだ。
?
取り出してみる。定期券だ。
そう言えば昼間、部屋の掃除をすべく掃除機をガーガー振り回した。過って机の脚に当て、落ちた定期をとりあえずポケットに突っ込んだのだ。
学校かぁ〜
部活動に力を入れているワケではないから、体育館も閉まっているだろう。
だが、すぐに考え直す。
蔦の顔が思い浮かんだ。
ヤツなら、夏休みでも練習してるかもしれない。学校だって申請すれば、休みの期間も使わせてくれるはずだ。
昼間は暑いから夜の方が練習しやすい。
蔦なら、いるかもしれない。
そう思うと、無償に行きたくなった。
蔦とバスケでもして身体を動かせば、頭もスッキリするかもしれない。何もかも忘れて、思いっきり身体を動かしたくなった。
行くか
思った時には駆け出していた。
|